あんな小さな８ビット機が無限の可能性を秘めていた時代。
モノラルＳＳＧ３音という貧弱な音源が、数々の名曲を奏でていた時代。
テレビへの出力に「アンテナ線に割り込む」などという乱暴な方法を使っていた時代。
わずか２Ｍビット（＝約２５６ｋバイト）の容量で大作ＲＰＧを作っていた時代。
限られた容量を確保するために、メッセージ１文字分のデータすら惜しんでいた時代。
「容量が足りなくて、町一つ分のイベントを切った」というエピソードが語られた時代。
たかがフロッピードライブと２Ｄにすら満たないディスクが、
次のゲームの世界を切り開いてくれると信じられていた時代。
隔週刊の雑誌に５１もの裏技が載った時代。
なお、その一つはウソ技（テク）である。
連打ができるだけでヒーローになれた時代。
ＲＰＧの途中経過を記録するのにパスワードを使っていた時代。
そのパスワードの写し間違いで泣いた時代。
数倍のマシンパワーを持つアーケードやパソコンのゲームを、
様々な知恵を振り絞って辛うじて「移植」していた時代。
３分で考えたような企画のゲームが平気で発売できた時代。
わずか数人のスタッフでゲームが作れた時代。
ゲームというものが、これほどまでに世の大人たちから叩かれ続けた時代。
そして、貧弱な８ビットゲーム機が、
ゲームという文化を「子供のおもちゃ」から「万人のエンターティメント」の域へと
高めた時代。
「良い」とか「悪い」とかではない。
それは「ファミコン」という一つの時代だった。
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