---

詠子(えいこ)：
　……うん、大丈夫。それほど時間はかからないね。このまま行けば来年の春には……。
　だけど、そうそう長くは待っていられなくなった。
　遅くとも今年中には決着をつけないと。そのためには、あたしが直々に最後の一押しを……。
竹人(たけと)：
　おい、詠子。前々から聞きたかったことがある。いいか？
詠子：
　いいけど、さっさと済ませて。こっちは根回しの電話入れなきゃいけないんだから。
竹人：
　何の根回しだ？
詠子：
　埋伏の計。スパイとして、ある人に潜入してもらう。
竹人：
　……やれスパイだの、やれ情報屋のマネだのと、お前いったい何をたくらんでいる？
　クラスメートの問題に顔を出し、当事者たちの気も知らずに好き勝手に事態を引っかき回して……。これで何回目だ？
　ゲームのつもりなのか？
詠子：
　偉大なる計画と呼びな。ゲームだなんて失敬な。
竹人：
　なら、その偉大なる計画って何だ？
詠子：
　ナ・イ・ショ☆
竹人：
　ふざけるな。これはクラス全体に関わる話だ。僕にはそれを確かめる義務がある。
詠子：
　じゃあ取引だ。昭和三十一年の五円玉探して、あたしにちょうだい。そしたら教えてやる。
竹人：
　無理だ。三十一年に五円玉は生産されてない。二十九年と三十年もだ。
詠子：
　ほー、よく知ってるね。あんたオタクでしょ？
竹人：
　おまえもな。
詠子：
　ま、ほかならぬあんたが相手だ。特別大サービスでヒントくらいは教えてやるよ。
竹人：
　何だ？
詠子：
　今回の長沢有佳ちゃんに、この前の黒崎紀ちゃんに、その他もろもろ。
　そして、「あいつ」。
　さあ、共通点は何でしょーか？